すべての人に性の学びを

 北区男女共同参画推進ネットワークまつりでの対談 すべての人に「性」の学びを ジェンダー平等の視点から性教育を考える に伺いました。お話されたのは、水野哲夫さん(‘人間と性’教育研究協議会代表幹事、大学・高校非常勤講師)と、遠見才希子さん(産婦人科医)です。

 水野さんからは、ご自身が高校で行っている総合科目「性と生の授業」の内容をご紹介頂きました。高校1年生で、年間26~27時間、確保されていると!!

 「性」という言葉が入っているだけで、生徒は、ヤバイ、エロイとひく感じがあるが、授業を進めていく中で、変化が生まれてくるとのこと。授業の内容は、2018年にも改定された「国際的なセクシュアリティ教育ガイダンス」をふまえて実施。

 その基本となる考え方は、1、人間関係、2、価値観、3、文化・社会・人権、4、発達、5、性的行動、6、性と生殖に関する健康、7、性暴力、8、ジェンダーの理解と幅広いもの。いのちや心とつながること、人間の存在の中心にあるもの、一生にかかわる大切なテーマとして考える内容です。

 人間にとって、性的関係とはどのような意味があるのか?性別とは?性の多様性について、社会の中の性と生を、人間関係を軸に考えてみる、性の商品化など様々な角度で考えあう授業内容のいったんに触れ、短い時間でしたが、とても引き込まれました。

 生徒さんたちが授業についてどのように感じているのか?授業を受けた後に、新入生にむけてのメッセージを書いてもらうそうですが、その内容を以下に紹介してくださいました。

「この授業では、みんな最初に恥ずかしみのある言葉「SEX」などの言葉が出てくるよ。けど、それで笑うのは子どもだと1年間を通じて学びました。だって、1+1=2と言って、みんな笑わないよね。それと同じで、この授業は性について、そして未来の自分の自分に必要な知識が学べるので、恥ずかしいと思うけど、知っていないと損をするので、しっかりと自分の知識にしてくださいね。」

 お~っ!なるほど~!!その他、資料に紹介された生徒さん達のメッセージを読んでも、最初は恥ずかしい、いやだな、意味あるの?と感じていた生徒さんも、自分の心と身体、将来にとって大切なこと、知った方がよいこと、人のあり方や性に関して、デートDVや性の多様性、同性愛についてなど学べて良かった等と書いており、学びの変化はスゴイ!と感じました。

 続けて、遠見才希子さん(産婦人科医)のお話です。遠見さんは、参加者に次々と問いかけ。

・みなさんAV(アダルトビデオ)についてどう考えるか?ある時「AVは18才以上の分別ある大人のために作られている、大人の娯楽」と言った人いる。でも中学生でも見ることができます。

・ジュニアアイドルと検索すると、水着姿の顔も全部出ている子どもたちがたくさん出てくる。被害児の9割以上は、フィルタリングを利用していません。

・JKビジネス絶対やっちゃダメ!とのメッセージがあるが、そもそも子どもを性の対象にして悪いことをする大人がいることはどうなのか。

・性的同意については、確認することが大事。性的なことをするのは対等でなければならないが、日本では13歳以上は、暴行・脅迫要件でなければレイプにならない。

・若者はなぜSEXするのか? 寂しい、誰かといたい。知識を得ることも大事だけれど心に響くことが大事。人は経験から学ぶ、失敗談・経験談を分かち合い、共有することが大事ではないか。

・日本の避妊法、避妊実行率は、先進国72.4%、日本は54.3%、ピル1%、コンドーム40.7%、膣外射精11.8%(避妊ではない)女性が主体的ではない。海外では、ピル、ISU、シールや注射もある。

・性暴力とは、同意がない、対等でない、性的行為のすべて。日本では、中絶が年間16万4千件。1日450人。10代は10%、一日44人。

・産婦人科実習でお産に立ち会い、赤ちゃんが生まれた時、そこに立ち会った人みんなが「おめでとうございます」と祝福。自分も涙が止まらなかった。命をみんなでサポートする、祝福されるものであってほしい。

・死産だった15センチの赤ちゃん。顔も体もできていた。小さな箱に大切に収められた。生まれてこれない命もある。今、生きていること、すごい確率で今いることそのものがすごいことなど、

 自分のいのちや性、親子のコミュニケーションのあり方まで、深く考えさせられるお話を頂きました。

●二人の講師のお話の後は、以下、質疑応答タイム

Q、東京都の教育委員会の外部講師活用についての状況は?

A、外部講師は産婦人科のみとしている。昨年度は5校、今年度は10校で実施。中学生で性交教えるのはダメとかはない。外部講師は子ども達の目線から、いろんな人が話し合ってできるといいのではないか。

Q、公立小・中学校で性教育をすすめるのに壁になるのは何か?

A、管理職や校長の考えあるのでは。養護教諭が頑張って確保してくれることが多い。秋田県は、医師会、県教育委員会がタイアップして進めている。長野県は、性教育を県民運動としてすすめている。県としても予算をつけている。PTA経由の依頼も増えてきている。学校以外でも、いろいろな人が知恵を出し合ってできるといい。大人も知らないことが多い、保護者や親世代が知ることは重要。

Q、性情報の氾濫について

A、年齢不相応の情報を与えるのは、虐待ではないか。Uチューブは無法地帯。性に関する認知や関係性をゆがめる可能性ある。カナダやイギリスでは、インターネットの検索も、信頼できる総合的な情報が、一番上に来る。

Q、家庭での対応について

A、性に限らないが、会話は親と子どもの関係性の問題。「何かあったら話してね」「おかえり、今日はどうだった?」との日常的な会話ができているかどうか」親に言えば、怒られる。否定される。迷惑をかけると考えれば、子どもは言わない。性は大事なことだと思っているというメッセージを伝えることは大事。親自身もどれくらい考えているのかが問われる。

Q、世界から遅れている避妊方法。

A、今、厚労省にむけて、緊急避妊用ピルのオンライン署名を実施中。

ネットワークまつりにて
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