韓国の女性ホームレス支援

 視察2日目は、ホテルから地下鉄を乗り継ぎ、社団法人が運営している「開かれた女性センター」を訪問しました。ご案内してくれた所長さんは、労働運動に携わっていたと自己紹介。2000年以降、韓国でも貧富の格差、失業者、ワーキングプアが増え、2008年のリーマンショックの影響で、ホームレスになった方々が街に増え、生活を支えなくてはと運動に取り組んだとのこと。

 2011年、露宿者などへの福祉及び自立支援に関する法律が制定され、人間らしい生活をする権利が明記された。露宿者の定義を、相当な期間、居住がない者や、露宿施設で生活する者の他に、居住としての適切性が著しく低いところで生活する者も加え、法律の対象・適用を拡大したとのこと。(とても画期的!)

 2016年の調査では、女性露宿者は全国で2500人、ソウル市で230人。ストリート露宿の危険性から、女性は教会や寺院、24時間開放の市場、駅舎内のトイレ、建物の階段、病院の待合室などにいる。露宿の原因は、家庭内暴力や精神障害が原因、子ども同伴も3割にのぼるなど支援の重要性が示されています。

●「開かれた女性センター」は、3階建て、30人が居住。家庭内暴力で逃げてくる母子や野宿している女性を保護するシェルターやグループホーム、社会復帰を支援しています。

 支援のフローチャートは、1週間はアセスメント、1ヶ月は新規入所で、心身の回復、1~3ヶ月は初期利用、4ヶ月~12ヶ月で精神などの治療や回復、自立支援をすすめます。1年を目途に、社会福祉制度受給や職業訓練、貯蓄、居住支援、心理教育プログラム、児童支援を行い、当事者も運営に参加し、主体性や人権擁護を身につけていくプログラムで、居住のすぐそばには、就労の場としての「コミュニティカフェ」も運営されていました。

 

●その後、一行は川沿いを20分ほど歩いて「地域コミュニティセンター」へ移動。このセンターは、開かれた女性センターを退所した後、地域で居住している女性達が、閉じこもりがちであったり、社会参加が難しいという状況から、女性達が集れる場所を作ろう。その場所に支援者や地域の方がかかわりを持つようにしようと発想を転換して生みだされた公共空間です。 社会福祉募金会から、年間2億ウオン(2000万円)の運営資金を得て、当事者が主体となり、カフェや作業、趣味などのプログラムを開発しながら運営しているとのことでした。


 

●昼食をはさみ、次は、バスに乗車して移動。露宿女性のための支援住宅を視察しました。

 2016年に、ソウル市でも支援住宅条例が制定され、ワンルーム型の住宅の他に、日常生活や投薬管理、心理ケアなどのサービスを提供し、地域生活の定着がはかれるようにサポート。男性20戸、女性18戸。家賃は1.1~1.6万円。

 ソウル市支援住宅推進計画では、2018年~2022年までの4年間で、1150戸の運営を予定しており、所要予算は1078億ウオン(約108億円)地域社会中心の居住福祉コミュニティケアを推進するとのこと。

居住支援住宅の室内の様子

 ハウジングファーストの立場が本当にすばらしい!!と感じました。

川沿いには健康器具がたくさん並ぶ。チョットだけトライ!

道すがら、詩人のユン・ドンジュの碑に遭遇。母語で詩を書くことが許されず、同志社大学在学中に治安維持法で逮捕され、1945年2月、福岡刑務所で獄死。27歳だった。

これ以前の記事を見る