韓国性売買被害者の回復と自立支援

 韓国では1961年に制定された、性売春する女性を処罰する「倫落行為等防止法」から、2004年に「性売買斡旋行為処罰法」と「性売買防止法」が制定されました。この関連2法により、性売買が不法である認識を確立し、売春業者の処罰と被害者の保護と自立支援により、性産業の縮小と被害者の人権保護を推進することになりました。

 この法律の下、生活の自立支援システムが、当事者・支援者中心にスタートしており、全国に40か所、ソウル市で10か所の施設を中心に運営されています。その施設のひとつ、「韓国女性の家」を視察しました。

女性の家の外観

多目的な共有スペース、おしゃれ(^^)

落ち着いた雰囲気の図書ルーム

 売春から脱出したいという女性の居住施設。男性から保護はするが、社会から隔離しない、閉鎖空間から、解放した運営を行い、自尊感情を高めていく。定員は20名。居住はしないが、日中プログラムを受けるだけの参加もあり。

 職員体制は、ソーシャルワーカー7名。調理員1名。事務1名の計9名。利用者と職員が、共同生活をして共に成長する。これまで59名が利用し、37名が退所。20代が31名を大半を占める。利用のきっかけは、性暴力相談所からの紹介が21名。オンラインで自分で探してが27名。

 背景には、債務整理で前借金で縛られている人が多い。精神治療・カウンセリング、歯科、内科と医療支援が必要。トラウマへの心理療法を年間プログラムで実施。高校卒業の学歴がない。体験も少なく、自己肯定感が低い方が多く、生活支援、料理、趣味、研修、職業訓練、自治会活動など、多彩なプログラムをおこなっている。誕生会をはじめてやったという人も。

 HPも立ち上げ、地域ボランティアやインターンシップも受け入れ、オープンな運営をすすめているとの説明を頂きました。

 2004年の法律制定以後、しくみづくりと実践が着々と進んでいる韓国の取り組みにてらすと、日本はいまだに、性売買などの困難を抱える被害女性を処罰の対象とする「売春防止法」が生き続け、人権や自己決定の尊重、自立を支援する法律がありません。

 韓国は15年も先を行っている!! その進んでいる取り組みに学び、日本でも一日も早く、売春防止法の改正し、女性の人権と自立を支援する新法制定、中・長期支援の取り組みを推進させたいと感じました。

 

 視察した施設の近くに「戦争と女性の人権博物館」があるとわかり、閉館ぎりぎりにかけこみました。日本軍による戦時性暴力を受けた被害者の少女たちに、心を寄せることができる空間です。戦争と暴力のない社会、世界を願い、時代を超えて共につながりたい。

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