売春防止法と女性支援事業について学びました

 コロナ禍で、国連が影のパンデミックと警鐘をならしている女性の困難は、日本でもDVや自殺者の増加、性被害や性搾取の若年化と深刻さを増しています。

 女性への支援は切実で喫緊の課題であり、11月20日、荒川区役所内で行われた、戒能民江お茶の水女子大学名誉教授による学習会「売春防止法と女性支援事業」に参加しました。

 戒能講師は、国が唯一責任を持つ女性支援事業である「婦人保護事業」の深刻な問題点を次々に指摘しました。

まず、法的根拠です。65年前の1956年に制定された特別刑法、処罰法の「売春防止法」であると述べました。

 被害を受けた女性を「要保護女子」と規定して、女性は社会環境を乱す加害者とみなし、行政処分をし、保護更生をする。これが法の目的です。つまり、福祉の対象として女性の自立を支援するという概念が全くない、と、法の重大な欠陥を述べました。

 次の問題は、婦人保護事業を構成する「婦人相談員」「婦人相談所」「婦人保護施設」。これらの基準や職員配置も根拠が不明確で、ようやくガイドラインができたものの、ナショナルスタンダードになっていないことです。

 2002年以降、こうした問題点をかかえたまま、対象が、DV、人身取引、ストーカー行為被害者へ拡大されていきました。行政の予算や施策が不十分であるゆえの問題点にメスを入れないまま、行革の流れで「婦人保護事業は不要」とまで言われました。一方で、深刻な事態への対応をせまられ、民間シェルターは増えてきました。しかしながら、民間シェルターへの公的財政支援は乏しく、従事者の確保も困難を極めています。その土台には、性の売買に関わる問題が、社会から隠されて見えにくく、メディアでの報道も少なく、個人の問題・周辺の問題に追いやられてきたことがあります。

 こうした中、少し明かりがさしてきました。

 婦人保護事業に携わる職員や支援団体の長年の運動により、2012年に国内初の検討会設置や、2018年から1年間、厚生労働省が「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」を設置し、2019年、「中間のまとめ」(最終報告だが行政はこう呼ぶ)が公表されました。

 「画期的意義を持つ」と戒能講師が語った、その内容は、若年女性支援、複合的困難に直面する女性のための新たな包括的支援制度の必要性や、売春防止法を根拠とした婦人保護事業の限界、売春防止法第4章「保護更生」は「廃止されることとなるものと考えられる」と、明記された点です。

 また2020年「第5次男女共同参画基本計画」に、「売買春への対策の推進」として、婦人保護事業の見直しに基づく新たな制度の構築検討が明記されたなどかすかな前進は見えます。とはいえ、具体的な法案内容は不明、売春防止法全体の見直しはこれから、です。

 最後に、「性売買は、あってはならないというのが基本です。性売買とは異なる未来に向けてのサポートが必要です」「売春防止法から脱却した女性支援法制定に向け、民間団体の力も借りながらつくる大きなソーシャルアクションを必死ですすめていこう」と、力をこめました。主催は買春社会を考える会。

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