2021.12.09
中絶薬に関する意見交換会
RHRリテラシー研究所が主催した「中絶薬に関する意見交換会」が、参議院会館で開催されました。
中絶薬は、妊娠継続に必要なホルモン止める「ミフェプリトン」と、子宮収縮薬「ミソプロストール」を組み合わせて使用するものですが、12月下旬に承認申請される予定と報道されています。こうした状況を受け、女性をはじめとした性の自己決定権を保障し、安全で安価な中絶薬の承認、利用を求めてきた研究所が、各政党の国会議員や、厚生労働省や法務省職員にも列席を求め、意見交換の場が持たれました。
最初に、RHR研究所より、5つの提言が説明されました。
提言1、中絶薬は速やかに承認すべきである。
中絶は多くの女性が必要とする医療ケアであり、国連人権規約、女性差別撤廃条約の一般勧告でも「女性と少女の中絶の権利」を保障すべきとしている。WHOは妊娠初期の「安全な中絶」は、中絶薬、吸引法とし、中絶薬はWHO必須医薬品コアリストに収録されている薬である。
提言2、中絶薬は必要とするすべての国民が使えるようにすべきである。
世界の中絶薬の平均価格は約780円に比べ、日本では中絶費用が10~20万円もする懲罰的な高さである。よって、不相応に高い価格設定がなされないよう監視が必要、健康保険を適用、無償化も必要。平等の原則にもとづく提供システムを。国内にいる外国人にも提供すべきである。
提言3、刑法堕胎罪と母体保護法の配偶者同意要件は廃止すべきである。
上記の存在は、中絶を必要とする女性や少女たちを不当に苦しめている。社会的なスティグマの源泉にもなり、安全かつ合法的な中絶へのアクセスの障壁になっている。
提言4、遠隔医療を用いた自己管理中絶を導入すべきである。
電話やインターネットを通じて、診療、指導、オンライン処方を行う。郵送で自宅に届く薬を指導されたとおりに服用できるように。異常あれば医療従事者へ連絡、必要に応じ通院。自己管理中絶は、中絶を早期化でき、プライバシーも守られる。コロナパンデミックの際中で、提供し続けられる。感染リスクも低減できる。
提言5、母体保護法指定医師以外の医療者も中絶薬を扱えるように法改正すべき。
妊娠初期の中絶薬は処方や管理などは、ミッドレベル(補助看護師以上)の医療者でも行えることが、科学的エビデンスに支持されている。リプロダクティブ・ライツの中には、「到達可能な最高水準の身体的および精神的健康を享受する権利」「科学的進歩を享受する権利」も含まれる。医療提供者の利害によって、女性たちの権利が阻まれてはならない。
提言を説明後、国会議員をはじめ会場参加者からの質疑、意見、厚労省や法務省の職員からの応答などのやりとりが行われました。
提言にもとづく内容(その使い方や値段も含め)、十分、反映できるようにしてほしい旨、以下の意見が相次ぎました。
「承認はされるが、入院とセットや、結局、10万円近い費用がかかってしまうような制度設計は困る。適正価格にしてほしい」
「不妊治療とあわせ保険適用にもしてほしい」「スティグマにならない名称を考えてほしい」
「中絶薬の承認をきっかけに、中絶への見方や考え方も変えていく必要がある」
「刑法堕胎罪は、1907年制定、120年以上たっている法律に、日本の女性は未だに縛られている。刑法における堕胎罪の保護法益は、胎児の生命とされているが、国連では、胎児の人権は生まれてからのものであり女性の人権を損ねてはならない。まだ形も形成されない妊娠初期のうちに、安全に必要な中絶ができることは女性の権利。」
「日本では、避妊、中絶、産まないという選択や人生が阻まれていると感じる。子どもは親が判断し、大人になっても女性は夫に判断される。1人の判断で、自分の身体、人生を決めるようにしていきたい。世界基準の人権がほしい。」
どの質問、意見ももっともだと強く共感しました。女性の権利擁護が、日本では本当に遅れている現状を突きつけられますが、くさらず、諦めず、取り組んでいかなければーと決意しています。