2022.03.23
令和4年(2022年)度、東京都北区一般会計予算、国保会計予算、後期高齢者医療会計予算に対する反対討論及び一般会計予算の組み替え動議に対する賛成討論
3月23日、北区議会最終本会議において、北区の新年度予算案について、児童相談所等複合施設開設に向けた基本設計・実施設計の着手、子どもの見守り体制の強化、子どもの医療的ケア事業の拡充、一般会計については3点の理由から、国保及び後期高齢医療会計については、保険料値上げの点から、党区議団を代表して、せいの恵子区議が反対討論を行いました。以下、討論の全文です。
2022年度(令和4年度)北区一般会計予算に対する反対討論 日本共産党北区議員団 せいの恵子
討論に先立ち、一言申し添えます。
3月16日に起こった福島・宮城沖地震で被害にあわれたみなさまに心よりお見舞い申し上げます。ウクライナでは、ロシア軍の侵略開始以降出産が4300件以上、今後3か月で8万人の女性が出産する予定だと言います。生まれてくる命、全ての人の命が犠牲になる戦争は絶対に起こしてはなりません。
北区平和都市宣言は、「日本国憲法に掲げられた恒久平和の理念に基づき、平和で自由な共同社会の実現に向けて努力」していること、「わが国が非核三原則を堅持することを求める」としています。その立場に立ち、ロシアによるウクライナ侵略に抗議し、ただちに中止・撤退を求めます。
それでは、討論に入ります。
私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました第28号議案、2022(令和4)年度東京都北区一般会計予算、第29号議案、東京都北区国民健康保険事業会計予算及び、第31号議案、東京都北区後期高齢者医療会計予算に対する反対討論を行います。
新年度予算においては、児童相談所等複合施設開設に向けた基本設計・実施設計の着手、子どもの見守り体制の強化、パートナーシップ宣誓制度の開始、女性へのLINE相談やアウトリーチ支援の拡充、庁舎の再エネ由来電力への切り替え、コミュニティバス新規路線導入などについては、住民要望の反映として評価いたします。
しかし、以下3点の理由から一般会計予算に反対いたします。
第1の理由は、特別区税、特別区交付金などの大幅な増収を見込み、当初としては過去最大規模となる予算案の中で、新型コロナ対策や、コロナ禍によって影響を受ける区民、事業者への支援が不十分にとどまっていることです。
新規感染者の動向はいまだ予断を許しません。コロナを抑え込み区民の不安を解消するために、PCR無料検査の継続と拡充、高齢・障害施設に加え、保育園や学校の従事者への定期検査の実施が強く求められます。
また、ロシアのウクライナ侵略の影響による経済的影響や物価高などを考慮しても、コロナ禍によって深刻な影響を受ける子育て世帯や低所得者世帯、支援の行き届かない事業者など、区民、区内事業者へのさらなる支援が必要です。
新年度予算を「新型コロナを克服する積極的予算」と位置づけるならば、約170億円に積み上がった財政調整基金のさらなる活用や、年度末と合わせ70億円にも上る特定目的基金の積み立てを一部取りやめて、区民の暮らし・営業を支援する施策を、いっそう拡充すべきではないでしょうか。
区民の方から先日、このような言葉を頂きました。「コロナで仕事が出来なくなり、私が本当に大変だった時に、1番力になってくれたのは行政の支援でした。支援がなければ、今の私はいません。感謝しています」。国や東京都の支援が不十分な時こそ、北区の出番です。区民に一番身近な行政として、区民に寄り添う姿勢を貫いていただきたいと切に願います。
第2は、コロナ禍の下、貧困と格差を広げてきた新自由主義の弊害を直視せず、経営改革の名で行革路線に固執する姿勢です。
2000年代初頭の小泉「構造改革」以来、歴代政権は新自由主義をいっそう加速させ、北区も2005年の経営改革プラン策定を契機に、職員削減、外部化、受益者負担を柱とする北区行革路線を推し進めてきました。
1997年、地域保健法が施行され、旧保健所法では人口10万人当たり1か所とされていた保健所の設置目安が人口20万人当たり1か所に緩和されました。そして、北区でも3か所あった保健所が1か所に統合されました。区は、これを「機能強化」と呼びましたが、コロナ危機の下では保健所のひっ迫はより深刻化し、全庁的な応援職員の確保が不可欠な状況が生じました。保健所長をはじめ職員の日々の懸命な努力に敬意を表しますが、医療費削減を過度に推し進めた行革による弊害であることは明らかです。
今後いつ起こるとも分からない災害や新たな感染症・パンデミックに立ち向かう、地域の公衆衛生の基盤を再構築するため、保健師など正規の専門職の計画的増員を図り、執務スペースの拡充、長期的視野に立った保健所の増設を検討していくことが必要です。
加えて、東京都が強行しようとしている都立病院・公社病院の独立行政法人化は、公的医療を切り縮め、コロナ対策にも逆行する暴挙です。予算審議の中で、区がこれを批判せず、「迅速で柔軟な運営ができる」などとする東京都の主張を繰り返す立場に終始したことは認められません。
さらに、行革の一環として進められてきた公共施設の削減も、区民生活に大きな影響を及ぼしています。
学校施設では、この間、児童・生徒が減少するとして小学校の統廃合が進められてきましたが、人口が増加に転じ、全校での放課後子ども総合プランの実施や学童クラブの校内への移行、小中学校での段階的な35人学級が進み始めたことから、教室不足が顕在化しています。
コロナ禍での給付金の申請やワクチン接種の予約など、ネットによる予約・申請が苦手な人にとって、職員が丁寧に対応する区民に身近な窓口の必要性は増していますが、7か所に設置されていた区民事務所分室は、全て廃止となりました。
また区民とともに環境改善を進めてきたエコー広場館を廃止・縮小することは、「北区ゼロカーボンシティ宣言」に逆行するものです。
すでに実態と合わなくなっている、「20年間で15%の施設削減」という公共施設再配置方針の目標は、速やかな見直しを求めます。
区は、引き続き経営改革プランを推し進める姿勢ですが、新たな基本構想の策定を機に、矛盾に満ちた行革路線は大本から見直すべきです。
第3の理由は、民間企業と一体に超高層マンションを呼び込む駅前開発や大型道路建設など、住民合意に欠けるまちづくりの姿勢です。
区はこの間、十条・赤羽駅前にタワーマンンションを誘致する市街地再開発を進めてきました。しかし、高層マンション中心のまちづくりは、東京一極集中を加速させ、周辺商店街の営業やコミュニティ、都市の気候変動にも影響を及ぼします。現在行われている基本構想審議会でも、「タワマンなしで程良く発展!」と望む区民の声が紹介されています。駅周辺のまちづくりでは、住民合意の協議を大前提に、昔ながらの街並みや商店街を残すとともに、新たな高層マンションの誘致を抑制することを求めます。
赤羽台のまちづくりでは、新たな児童相談所等複合施設の最良の環境確保を最優先とし、住民への丁寧な説明と合意を踏まえ進めるよう求めます。
加えて、誰もが北区に住み続けられるまちづくりを目指し、都営住宅空き家の積極的活用とともに、住宅要配慮者の専用賃貸住宅の確保に取り組むことを求めます。
また、特定整備路線をめぐっては、今なお区内で認可取消しを求める三つの住民訴訟が争われていますが、東京都に追従して住民合意をないがしろにするまちづくりの進め方に、区としての改善が不十分です。
改めて住民が主役となるまちづくりの姿勢に立ち戻るよう求めます。
次に、特別会計予算についてです。
まず、国民健康保険事業会計予算は、未就学児の国民健康保険料の均等割額半額実施となりましたが、総合的には新年度保険料が値上げになることから、反対します。
後期高齢者医療会計予算については、均等割額の軽減措置の見直しや10月からの窓口負担2割導入により、被保険者の負担増となることから、反対します。
介護保険会計予算には賛成いたします。なお、コロナ禍でも介護現場で奮闘されている介護従事者の処遇改善には、区として前向きに取り組んでいただくよう求めておきます。
続いて、第28号議案、2022(令和4)年度東京都北区一般会計予算の組み替えを求める動議に賛成する討論を行います。
今回の組み替え動議の内容は、先ほどの提案理由の説明で述べた通り、長引くコロナ禍の下、更に、物価値上げなどの影響が予測される中、区民のくらしと区内事業者の営業支える緊急の直接支援として、財政調整基金20億円、まちづくり基金8億円を活用した予算組み替えとなっています。
その意義は、2年以上にわたるコロナ禍において、これまで国や東京都が行ってきた直接支援により、区民・事業者の生活・営業が支えられ、また、北区が今年度末、独自事業として、民間福祉事業所や医療機関等へ、約6億5千万円の補正予算を組んだように、新年度予算案においても、思いきった現金などの直接支援を行って、区民生活を守り、ひいては区内経済の循環、活性化につなげることにあります。
例えば、子育て世帯への特別給付金については、所得制限によって未支給となった世帯の方々から「税金を納めるばかりで、十分なサービスを受けられないことが多い。けれども、教育費や住宅費などの負担は大きい。子ども一人ひとり、公平に対応してほしい」との強い声が寄せられています。
また、住民税均等割5000円課税、7500世帯の方々は、そのほとんどがいわゆる生活保護基準のボーダー層の方々です。非課税となる所得135万円を、わずかに数千円こえただけで、課税世帯となり、国保料などの各種保険料の負担が重くなります。非課税世帯と同様の生活、もしくは、生活保護基準以下の生活の方もおられる厳しさです。
更に、区内の商店や事業者からは「これからが、本当に正念場だ」との切羽詰まった声が寄せられています。
加えて、会計年度職員の方への一時金減額の補填については、例えば、国の保育などケア労働従事者の処遇改善が対象外となっている点からも重要です。
他方、新年度予算案は、コロナ禍においても、特別区税、特別区交付金が大幅な増収となり、当初予算としては過去最大規模となりました。積極的予算との区の位置づけ、財政対応力にふさわしく、先に述べた区民へのきめ細かな支援を更に行うことが必要と考えます。
今年度末の財政調整基金残高は、当初予算時の見込みより、60億円以上に残高が増え、170億円余と昨年度とほぼ横ばいとなりました。新年度予算案では、財政調整基金58億円の取り崩しを予定していますが、これまでの財調基金の推移をみれば、組み換え動議で提案している、更なる20億円の活用は十分可能であり、税の好循環をはかるべきと考えます。
更に、まちづくり基金については、今年度も当初予算での積み立ては見送り、年度末の最終補正により積み立てられました。こうした考え方で、新年度予算案についても、区民のくらし支援を、まずは最優先に活用すべきと考えます。
以上、組み替え動議の積極的な意義について、述べさせて頂きました。議場の皆様のご賛同を心よりお願いし、賛成討論といたします。ご清聴ありがとうございました。