あたらしい家族の形ー里親養育

11月4日、北とぴあにて、令和4年度北区養育家庭体験発表会が行われ、私も参加しました。

主催者である北区子ども家庭支援センターの酒井所長から「北児童相談所と協力して毎年、取り組んできた。今日は、里親さんの生の声が聴ける貴重な機会」とのご挨拶の後、北児童相談所の野田所長より「東京都の里親制度について」ご報告がありました。(以下、要旨)

親の病気、死別、虐待などにより家庭で生活できない子ども(社会的養護が必要な子ども)が、現在、全国では約46000人、東京都では4000人存在しています。家庭に変わって、施設(2歳までは乳児院、概ね高校卒業までは児童養護施設)や里親制度の下で、公的に育てていくことになる。

里親の占める割合は、東京で約15%(登録家庭は552家族、そのうち委託しているのは317家族、児童は430人)北区では、登録が17家族、委託が10家族、児童は10人と現状が紹介されました。

里親の種類には、家庭裁判所で審判する養子縁組里親と、養子縁組を目的とせず、基準にもとづき養育を行う養育家庭里親があり、養育家庭里親についての登録要件、サポート体制、実際の里親さんの状況などお話がありました。

続いて、基調講演「あたらしい家族のかたち」~里親養育のやりがいを中心にして~と題し、東京家政大学の金城悟氏よりお話がありました。(以下、要旨)

家族の機能には、生殖、教育、経済、情緒の安定、福祉や保護などがあり、現在社会においては様々な多様な家族のかたち、シングルマザーやシングルファザー、ステップファミリー(血縁ではない親子関係を含んだ家族)、外国にルーツを持つ家族、LGBT家族、ひとり親家族、核家族、3世代家族、事実婚家族、夫婦別姓家族、拡張家族(血縁のない家族)、その他がある。里親家族は、その中のひとつ。

家族の中に人権侵害や暴力がある時、家族機能の破綻、崩壊がおこる。

子どもの人権侵害である虐待は、子どものこころの健康や脳に影響を及ぼすことが、科学的にも明らかになってきた。夫婦間のDVを目撃したり、性的虐待を受けた子どもは、その辛さ、自己防衛のために、脳の視覚野の減少がおき、脳が縮んでしまう。コミュニケーションや人間関係の困難さ、生きづらさを抱えることにつながる。

しかし、脳は傷ついても、元に戻る力もあるー可塑性

実親でなくても、他の人との関係、里親も含め、子どもに豊かな愛情が注がれる関係があれば、苦しみや辛さ、虚しさを癒すことができる。

小児期の辛い体験(暴力、虐待、ネグレクト、家庭内暴力の目撃、家族の自殺未遂や死など)逆境体験を予防することは、ウエルビーイング、健康に生きる上でも優先事項である。(アメリカの研究・調査でも明らかに)

里親養育は、子どもの試し行動(子どもが安心できる空間か、関係か、距離感を見極める防衛反応)や赤ちゃん返り(愛情飢餓の裏返し)、真実の告知、ルーツ探しなど、大変さもあるが、

里親さんの声、アンケート調査でも、子どもを育てる喜びや幸福感、里親になって良かったとの肯定が8割に達している。傷ついた子どもを何とかしたい。みんなで力をあわせていきたい!と呼びかけられました。

第2部では、区内で里親として子どもを育てているお二人から、その体験を直接聞かせて頂くことができました。

里子を迎えることになった背景や思いはそれぞれですが、子どもを大切にしたい。自分たちの家族の一員として育て、共に育ちあいたいという日々のくらしの様子、子どもの成長していく姿が伝わり、とても温かい気持ちになりました。

お話のあと、会場の参加者からも、「子どもの試し行動に接した時にどう対応したのか」「里親は仕事をしていてもできるのか」「心がおれそうになったことはないのか」「実子との関係はどうか」「里親同士の交流はあるか」など、次々と質問が寄せられ、里親さんや家政大学の金城氏の応答もとても参考になるものでした。

最後に、金城氏から「思春期の時など、激しい行動がでる時もあるが、波をこえて自分を振り返る時が必ず来る。その時に子どもが受けとめてくれることもある。自分はこんなにやったのにと見返りを求めるのではなく、子育てそのものに向き合う。子どもと過ごす時間を大事にする。一緒に何かをする体験が大事ではないか」とのお話は、とても心に響きました。

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