社会的養護の変革期を展望する

2023年度全国児童養護問題研究会東日本(東京)研修会に参加しました。テーマは「社会的養護の変革期を展望する」

午前中は、会場となった北区にある児童養護施設星美ホームの見学。

この約5年間、星美ホームでは施設の建替え工事が行われ、昨年11月から開設となり、新しい施設を見学させて頂く貴重な機会となりました。

本体施設は3階建て。1階には北区も委託しているショートスティ(23区で一番利用料が低廉。稼働率も高いとのこと)や、幼児専用ユニット、応接室や面会室、医務室などが設置。2~3階が子ども達の居室(個室)やリビング・ダイニング、スタッフルームなど、ユニット形式で整備されていました。

新年度からは、地域支援として若者向けのシェアハウスの活用も検討しているとのこと。(期待大!)

本体施設以外に、世話人の方が同居しているファミリーホーム(小規模住居型)や、7つのグループホームも見学させて頂きました。大半がここ数年での建設されたとのことでしたが、ソフト面でも児童養護施設などの子どもの高等教育無償化、大学・就職等自立生活支援金、自立支援担当職員の配置など、地域での自立生活を支援する施策が拡充していることを実感しました。

一緒に参加した、青木のぶえ北区議とグループホームリビングにて

午後の研修会では、全国児童養護問題研究会会長の武藤素明氏より、今後の社会的養護へ求められる課題と取り組みについて基調報告がありました。

新年度4月から改正児童福祉法が施行となり、大きく7つの柱(1)市区町村にて妊産婦・子育て支援の包括的子ども家庭センターの整備・拡充。(2)一時保護所等の環境改善や里親支援センターの設置。(3)児童養護施設等の入所児童の自立支援の強化(22歳以上も施設の継続や支援が受けられる)(4)児童の意見聴取の仕組みづくり(アドボケイトの制度化)(5)一時保護開始の判断に関する仕組みづくり(6)子ども家庭福祉に関わる資格要件の整備(子ども家庭支援ソーシャルワーカー)(7)わいせつ行為を行った保育士等の厳罰化)について紹介。

今後1年かけて都道府県ごとに推進計画もたてていくことになるが、社会的養護ニーズにいかに応えていくか、権利擁護等の質的目標をどう盛り込むか、人材対策も重要と。

まとめに、国は子どもまん中社会をめざしているが、未来に失望している子ども達に元気と展望を持たせる役割を担う社会的養護の現場、しかも限りなく長期に関わることが必要であり、そこに向き合う職員や養育者、支援者が心身ともに元気で向き合うことができる環境整備や体制整備が何より大事。

地域社会の中で、子ども達がしっかりと育っていく社会となるように、社会的養護施設等から社会発信していきたいと結ばれました。

一般社団法人たすけあい代表理事、田中れいか氏からは、

社会的養護施設を退所する際、「自分1人で生きていかなければならないんだ」「卒業したらもうもどれない」との気持ちになり、孤独感、孤立感で苦しんだ経験をお話され、人との出会い、つながりで心が回復した中で、現在は当事者として子ども家庭庁審議会委員として、子どもの居場所づくりの施策に関わっている取り組みについてお話頂きました。

全国児童養護問題研究会副会長の早川悟司氏は、

退所者が負わされている3大不条理として、1、若年・低学歴で強いられる社会的自立(不安定な成育状況にありながら、早期に自立を強いられ、社会適応が一層困難に)2、地域生活の連続性の欠如(子どもを支える3つの柱、家庭・学校・地域が奪われている)3、支援の格差(入所施設によって支援に格差がある)と指摘し、貧困・虐待・暴力の連鎖が続き、病んでいるのは子どもではなく社会と強調。

子どもの意見表明権が言われているが、意思形成、意思表明、意志実現の意思決定支援をめざす必要がある。そのために、当事者のニーズ(表明されたニーズの裏にある真意)と、専門的、客観的な専門家のニーズを合意されたニーズとする日常化が大切だと、実践を通じてお話頂きました。

 研修会に参加し、令和8年度、北区では区立児童相談所(一時保護施設)が開設予定であるが、子どもの権利、意見表明が保障される体制や環境、人材確保のためにも、区内の児童養護施設等との連携をますますはかっていきたいと感じました。

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