反貧困ネットワーク全国集会2024

 4月7日、反貧困ネットワーク全国集会2024(反貧困ネットワーク主催、理事長宇都宮健児さん)が、平和と労働センター・全労連会館を会場に開催されました。

 今年の企画では、韓国や台湾で、困窮者支援、当事者・連帯の社会活動を行っている方々も来日し、その活動内容が報告され、東アジアにおける連帯シンポジウムとして、共に学び交流できたことが大きな収穫となりました。

 テーマは大きく3つ「ホームレス支援と医療アウトリーチ」「女性の貧困」「困窮者の居住貧困」についてです。

 1、ホームレス支援と医療アウトリーチでは、

 ハウジングファーストと医療アウトリーチ支援を柱に、池袋で炊き出し相談会やこころと身体のよろず相談を行っている一般社団法人つくろいファンド「ほしぞら医療団」が報告。

 コロナ前は毎週30~45人の利用だったが、現在は80~90人と利用者が増加。(食料だけでみると400~500人)高血圧や膝・腰痛、皮膚のかゆみなど、医療にかかれず、中断している方も多く、医師が紹介状を書き、無料低額診療所を案内するなどしている。様々なトラウマ体験を語る人も多く、精神科医や看護師、ボランティアなどがチームで話を聞いている。

 その場は、関係性を築き、いざという時に相談や専門機関へとつなげることができるよう、支援の入口としての役割が果たすことをめざしている。また治療が行えるためにも、安心できる住まいが必要。医療支援単体ではなく、住まい・生活・居場所・仕事などそれぞれのニーズにあわせた包括的な支援が求められると強調しました。

 さらに、台湾の台北駅周辺でホームレスに向けた「医療アウトリーチ」活動について「台湾思安慈善事業協会」が報告。ホームレスの方は150~250人位いるが、そのうち半分は働いており、2割は女性であること。行政のケースワーカーと同行訪問し、行政と連携しながら進めている内容が語られました。

 2、女性の貧困では、

 Colabo代表の仁藤さんから、家に居場所がなく街を彷徨う10代の女性達が、性搾取や性売買、児童買春につながることがないよう、2018年からはじめているアウトリーチ活動、バスカフェ事業(一晩4時間で、40~50人が利用)、緊急的な避難や宿泊支援、中長期のシェルター(シェアハウス、保証人不要・初期費用なし・家賃3ヵ月無料)、居住支援などの活動について報告。

 大切にしているのは、支援する・されるという関係ではなく、一緒に現状を変えていく仲間、主体的な当事者運動として取り組むこと。この間、深刻な妨害や嫌がらせを受けてきた現状があるが、多くの人と連帯し、活動を続けていきたいとお話されました。

 韓国からは「開かれた女性センター」の徐貞花さんが、韓国女性のホームレス問題とサポートポリシーと題して報告。

1、韓国の女性の貧困の指標として、

 男女の所得・賃金格差が、31.1(OECD平均11・9)%、女性の5人に1人は最低賃金(2024年9860ウオン)に満たない。男女の非正規雇用率は、男性29.8%、女性45.5%(2023年統計庁)、母子家庭の貧困率47.7%、一般家庭10.7%に比べ約4倍。女性高齢者の貧困も男性の1.5倍など、韓国の女性は男性よりはるかに貧しい実態にあると指摘。

2、韓国の居住の貧困については、

 2017年と2022年を比較し、居住貧困階層が19.9%増加。宿泊施設の客室や小屋・ビニルハウス、考試院(試験のための勉強部屋)などを住まいとする人が増え、食事を抜くなどの生計維持が困難な状況がある。

3、韓国の女性露宿人の現状は、

 2021年、全体で125名(ソウルで92名)(2016年は全体で230人)であるが、隠れている女性を見つけることが難しく、潜在化しているのでは。施設でも、路上でも医療は無料で支援される。(疾患の1位は精神42%、代謝疾患40%)

4、地域社会定住支援のための住宅施策

 公共賃貸住宅における支援の強化(居住脆弱階層買取賃貸住宅の供給)や、サービス付き支援住宅の提供を行っている。

 居住脆弱階層買取賃貸住宅(行政が民間住宅を買取って提供)は、都市勤労者中位所得70%以下(月156万ウオン)、最低居住基準に満たない場所に3ヵ月以上居住した人が対象で、2011年~2020年までに、14600戸提供されている。

 サービス付き支援住宅は、

2014年、支援住宅制度導入。民間法人でモデル実施。男性12戸、女性9戸(2015年)

2016年、ソウル市がモデル実施。男性アルコール19戸、女性精神&アルコール(17戸)

2018年、ソウル市が「支援住宅の供給や運営に関する条例」制定。

2023年、露宿人だけで275戸が供給(6人に1人の割合で、ケースワーカーが配置されている)

5、今後の課題

 性暴力やDV、精神疾患、子ども同伴などへの対応、生活サポートや支援雇用の拡大について、条例から国の法律にして整備を促進していくことが述べられました。

 私自身、2019年に視察で韓国ソウル市を訪問した際、「開かれた女性センター」を訪れ、女性の露宿人やDV被害者へのシェルターや支援プログラム、コミュニティセンター、スタートしたばかりの「支援住宅」も見学させて頂きました。北区の住宅支援にも学びを活かしていきたいと思います。

開かれた女性センター所長の徐さんとご挨拶

 

 

 

 

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