2024.10.05
女性のライフサポートを学ぶin国立女性会館にて
10月4日(金)~5日(土)国立女性教育会館で実施された「女性のライフサポート研修2024」に参加し、女性支援における官民連携や支援のあり方などについて学びました。
1日目は、厚生労働省社会・援護局総務課女性支援室の柳瀬氏より、女性支援新法における民間団体との協働による支援について報告を受け、行政と民間の連携について、参加者同士で話し合うワークショップが行われました。
新法にもとづく「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針」では、民間団体等について、これまでの活動で蓄積されてきた知見や人材は重要であり、都道府県や市町村と対等な立場で協働し支援体制を検討すること。また行政側は、民間団体が安定的運営が継続できる支援、若年女性や中高年女性など、幅広い年代の女性支援に取り組む団体が育成されるよう留意すること。
更に体制としては、女性本人を中心に連携、協働するために、支援調整会議など個別ケースの支援を重ねていくことで情報共有、支援体制を強化していく。また、連携にあたっては、女性が性暴力や性的虐待、性的搾取等の困難の原因、背景となっている構造に依存しないで生活できるよう支援する重要性を共有するよう留意することが示されています。
上記の基本方針に即して、都道府県は基本計画を策定するがR6年9月現在の策定状況は、策定済みが44都道府県(東京都は、女性支援新法にもとづく計画としてR6~10年度の計画)となっている。
R7年度の概算要求額は56億円(今年度52億円)、主な拡充内容についても以下、紹介されました。
●官民協働等女性支援事業 困難を抱える女性へのアウトリーチ(SNS相談必須、見回り・声かけ)からの相談、居場所の確保(一時的に安心、安全な居場所の提供、食事や日常生活の相談支援を行う)、地域での自立・定着、切れ目のない支援(居住地や就業に関する情報提供や助言、家庭・職場訪問などアフターケア)●女性支援機関におけるスーパービジョン(スーパーバイザーが助言)整備 ●女性自立支援施設通所型支援モデル事業(若年女性、同伴児のいる女性、障害をもつ女性などの3割が入所に繋がっていない状況について通所支援などのあり方を検討)●人材育成の強化など
参加者がグループに分かれて、行政と民間の連携で大事と考えるワークショップでは、以下の内容が報告されました。
行政職員の移動、担当者で対応違う。自治体によってもサービスが違う。現場に足を運び、必要な予算をつけ、どこにいても同じ支援が受けられるようにしてほしい。とりわけ、女性や若者は移動する世代。自治体をこえて支援に繋げてほしい。
行政は何ができるのか、団体の側も法律や制度を理解し、情報共有、対等な関係をつくりながら、同じ方向へ動いていけるように。民間同士もつながり必要。プラットホームあるといい。官と民をつなぐ人が必要。寄付、助成金、委託を受けることも含め意見交換が必要。
2日目は、依存症を抱える女性などへの支援を行っている法人や若年女性支援を行っている法人、女性自立支援施設や自治体の男女平等ステーションでの取り組み等による事例共有と意見交換。
以下のことを学び考えました。
●発達、知的、精神障害など生きづらさを抱えている方が、虐待や暴力、DV、性被害、孤立・孤独、ストレスなどにより傷つき、何かに依存する(アルコール、ギャンブル、薬物、万引き、性行動など)ことで安心を得ようとする行動を、別のことで自身をコントロールできる成功体験を積み重ねていくことに寄りそう支援が必要。
●貧困や障害、居所なし、性暴力、性搾取など、社会的支援が必要な女性達が、新法成立までは売春防止法にもとづく「保護、更生」収容の対象、問題は本人にあり、人権擁護という視点はなかった。その中でも一人ひとりが「自分のくらしをつくる」「奪われたくらしをつくりなおす」「一人を尊重する」ことを大切に、様々な被害からの回復を支援とともに、法律を変える取り組みがすすめられてきた。「地域から差別のまなざしでみられた人」から「地域の生活主体としての存在」管理から解放へ。
●女性支援新法では「女性福祉」「人権尊重・擁護」「男女平等」、定義の中に「性的な被害」が明記されたことは画期的なこと。「当事者を真ん中におき」「民間団体との協働による連携・支援」で中・長期に支援ができるようにしていくことが必要。
●売春防止法ではできなかった、できにくかった「地域との連携」で「未然防止」に取り組む。今日、行くところがない人を受け入れることができる「居場所」を、地域の中につくっていきたい。
●とくに「性的被害」からの回復はとりもどせない。回復したかにみえてフラッシュバックがおこる。子どもの時の親からの暴力、18歳で歌舞伎町などへ飛び出す。18年間、生活の中でくらしをつくれていない。自分が自分として存在していない。小学校のアルバムに将来の自分「生きているとは思えない」と書くこと、どれだけの傷つきをしてきたか。支援がなければ孤独に陥る。自分をとりもどす居場所。入所制限がない、中・長期の支援がどうしても必要。
●若年女性の相談や居場所で配慮していることは、課題ある子を対象にするだけではハードルが高くなる。その施設や場所を使うことで、そう「見られる」ことの抵抗を低くするため、どんな子でも利用ができるよう工夫する。気軽な居場所のカフェコーナーでは、生活応援グッズとして、持ち帰りOKの軽食や生活必需品も用意している。(1回5品、月2回まで)経済的に困窮してる学生や若者にも好評。資金は寄附をよびかけて実施。
●行政の男女平等参画センターで、様々なテーマで語りあう場を企画し、居場所づくりの取り組みをおこなっている。宣伝はニュースなどの広報はもちろん、SNSや地域の掲示板でもお知らせ。
●民間で、若年女性の相談やシェルターやステップハウスなどにも取り組んでいるが、スタッフの人件費、専門家の確保、施設維持など本当に資金ぐりが大変。相談は夜間にかけても多く、24時間の活動になる。民間だけの力でとてもできることではない。本来は行政がしっかりと取り組む必要がある。
2日間の研修を終え、すべての困難を抱える女性に対する福祉と人権にもとづく支援の法律ができたということは、必要な支援・事業に対し公的な財源が保障される根拠ができたということであり、長年、日々、女性支援に携わってきた民間団体の活動が財源的にも支えられ、行政がまさに民間と協働して、当事者を真ん中に、複合的な課題でつながり、中・長期の支援が実施できるよう計画、実施することが必要と痛感しました。民間の皆さんの声をしっかりうけとめ行政へも求めていきたい。
国立女性会館(ヌエック)にて