2025年度北区予算に対する最終本会議での討論

3月25日、北区議会第1回定例会最終本会議において、北区の新年度予算案が賛成多数で可決しました。

日本共産党北区議員団は、大きく3つの理由から一般会計予算に反対し、先の見通しが持てない物価高が続く中、財政調整基金の一部を活用し総額29億8千万円となる、区民のくらしと営業を守る予算組み替え動議を、新社会党所属の福田議員、れいわ新選組の佐藤議員と共同して提案しましたが、組み替え動議は賛成少数で否決となりました。

 組み替え動議の内容は、区民から寄せられた切実なご要望をもとに提案したものです。その実現に、引き続き取り組みます。以下、組み替え動議の内容と、北区一般会計予算に反対、組み替え動議に賛成の討論内容を紹介します。

1、北区独自のくらし応援・物価高騰対策

・課税世帯による扶養非課税者や家計急変世帯、および課税標準額100万円以下の納税者にも3万円給付

・物価高騰の影響を受ける区内事業者へ直接支援

・高齢者や障がい者への介護従事者への給付 

・施設使用料の値下げ、若者料金の創設               

2、住宅支援の家賃補助の実施

・公営住宅に申し込むが落選となっている単身者や住宅要配慮者、および非正規雇用、若者・学生などへ家賃の補助              

3、教育費の負担軽減

・区立小・中学校の学用品や修学旅行、制服代の無償化 

4、国民健康保険料の負担軽減

・18歳までの均等割を5割減額するための手当                      

             

 私は、日本共産党北区議員団を代表して、ただいま上程されました第21号議案、2025(令 和7)年度東京都北区一般会計予算に対する反対討論を行います。

 新年度予算において、奨学資金返済支援給付事業の準備、不登校対策の拡充、転居費用補 助の開始、商店街空き店舗活用事業の拡充、コミュニティバス赤羽西ルートの検討などは、 住民要望の反映として評価いたします。

しかしながら、以下の理由から一般会計予算に反対します。

 この3月から2000品目以上の食品が値上げとなり、去年を上回るペースでの物価上昇、 毎日食べるお米の値段は5キロで約4000円と約2倍に跳ね上がり、悲鳴が上がっています。東京商工リサーチの調査では、2月の中小企業や店舗の倒産が前年より7.3%増の764 件と6か月連続で前年を上回り、今後 も 倒産が加速する可能性が高いと警告されています。

 予算審議では、終わりの見えない物価高が続く中、「中学生の息子と2人暮らし。ダブル ワークしても家賃が払えず生活が成り立たない」「 非正規契約が打ち切られ、収入が激減したが、家計急変は対象にならず給付金がもらえなかった」「食材の仕入れが 3 倍になったが、お客さんが離れてしまうので値段は据え置きのまま飲食店を経営している」という区民の切実な声をご紹介しました。

 こうした中、新年度は100億円超の歳入増を見込みながら、年度末と新年度あわせて80 億円を特定目的基金に積み立て、財政調整基金の残高は過去最高の 228 億円にまで積み上げるとしています。

 区は、昨今の建設コスト上昇から新庁舎建設や学校改築への一定の備えが必要といいますが、まったなしなのは、区民の生活や中小事業者の経営も同じです。

 後ほど詳しく述べるように、私たちは無会派所属の議員との共同で、物価高騰への緊急対策を講じるための予算組み替え動議を提案しています。基金に積み立てる余裕があるのなら、その一部を更なる暮らしや営業への支援に回すべきと強く求めます。

 区長は、「北区新時代」をスローガンに掲げ、前例にとらわれず、新しい改革をスピーディに進めると表明していますが、昨年度改定された「経営改革プラン2024」では、区の職員定数は削減、指定管理者制度など人件費削減につながる外部化や受益者負担の強化など、これまで通りの「行革」路線がそのまま継承されています。

 経営改革プランと同時に改定された「北区職員定数管理計画2024」では、6年後の職員定数を57人増員としていますが、100人以上の職員を配置する児童相談所等複合施設の新たな増員を除けば、実質は定数削減の計画となっています。

 区の職員が働く現場はどこも厳しい環境で、人手不足も一つの要因として職員のメンタル不調が増加している中、職員は増員こそ必要です。

 「経営改革プラン2024」では、指定管理者制度について「民間事業者の創意工夫・ノウハウを最大限発揮することができる制度運用の余地がある」と述べていますが、ここでいう 「民間事業者の創意工夫・ノウハウ」とは、公務員に比べて賃金を低く抑え、人件費の差額によって経費を浮かせることに他なりません。

 新年度、公契約条例の労働報酬下限額を177 円引き上げることは評価しますが、それでも会計年度任用職員の一番低い事務補助の時給と同額であり、さらに引き上げが必要です。

 また、新年度予算には「経営改革プラン」に基づき、総額1億円の施設使用料値上げや医療・介護保険料の延滞金徴収など、容赦のない区民負担増が盛り込まれています。

 区民サービス向上に逆行し、区民にさらなる負担増を強いる「経営改革プラン」を抜本的 に見直し、真に区民本位の行財政改革への転換こそ必要です。

 国と東京都、ディベロッパーが一体になって規制緩和に突き進んだ結果、市街地再開発が集中し建設されるタワマンの価格が勤労者年収の18倍となるなど、東京は「住めない街」 と化しています。

 板橋区では、大山ハッピーロード商店街のアーケードを断ち切って 4 棟のタワマンを建設する計画や、旧高島第七小学校跡地に区も関わって 110m のタワマンを建てようという計画に、地元住民あげての反対運動が起きています。

 中野区では、中野サンプラザと区役所の跡地に 262m という超高層のタワマンを建設するなどとする再開発計画が、建設費の高騰などにより白紙撤回となりました。

 十条駅西口では、建設された再開発ビルの周辺で風害が起き、商業施設は埋まらず、権利床はすでに中古で販売、賃貸にも出されています。

 東京都は今後、都が関与して建てられたタワマンを、投資・投機対象としないための規制をかける考えを表明しています。

 このように、景観・環境など周囲への影響や将来的な廃墟化の恐れから、タワマン建設には多くの区民から懸念の声があがっていますが、北区は、十条、赤羽、王子などの駅前で再開発事業を積極的に後押ししています。

 赤羽駅周辺地区まちづくりでは、公平・中立であるべき基本計画策定業務を当該地域の再開発利害関係者である企業に委託するとともに、地元住民が注視する事業手法や公共施設再配置などの検討は次年度以降に先送りとし、住民合意は置き去りにされています。

 大型開発に偏重した駅周辺まちづくりは抜本的に見直し、まちの魅力を残し、コストも節約できる修復型のまちづくりへの切り替えを強く求めるものです。

 新年度の国民健康保険料は値下げとなりますが、なお「払いたくても払えない」水準であることには変わりありません。予算審議の中では、新年度歳入増とな100 億円のわずか2%、2億円を回すだけで、18歳まですべての子どもの均等割をゼロ円にすることができると提案しました。実現を求めます。

 国や東京都には、財政支援を強く求めるとともに、一般会計からの法定外繰り入れ解消の強要をやめるよう求めて下さい。

 介護保険では、訪問介護報酬の引き下げで事業所の休廃止が相次ぎ、地域のケアを支える人がいなくなるとの心配の声が出始めています。区内でも廃業となった事業所が出ており、 危機感を持った対応が必要です。

 事業所の運営状況やヘルパーの実態を把握し、国には訪問介護報酬の引き上げ、国庫負担の増額をしっかりと求めて下さい。

 今回の動議は、物価高騰の影響を受ける区民のくらしと区内事業者の営業を支援するために、228 億円に積み上がった財政調整基金のうち、29億8,000万円を活用して緊急対策を講じるというものです。

 物価高騰対策給付金については、区としてすでに実績のある、扶養のみ・家計急変世帯への拡充とともに、生活保護基準なみの課税標準額100万円以下の世帯まで対象を広げます。 また、全産業の平均に比べて月額 5 万円も給与水準が低い介護・障がいサービス従事者へは3万円を給付、中小事業者への支援は、区内事業者の約1割を対象に直接給付を行った葛飾区の例を参考に提案しています。

 さらに、区民生活の窮状にかんがみ、新年度に予定している施設使用料の値上げは中止するとともに、割引制度を新設して若者を応援します。

 区は、住宅セーフティネット法にもとづく家賃軽減住宅を新年度 6 戸増やすとしていますが、需要に追いついていないのは明らかです。すでに杉並区が踏み出しているように、公営住宅に外れた人や応募資格がない学生、若年単身者などへの家賃補助制度を創設します。

 日本国憲法は「義務教育は無償とする」とうたっていますが、区立小・中学校で使う学用品などは自己負担となっているのが実態です。23 区内では、すでに品川、葛飾、墨田、荒川の 4 区が修学旅行や移動教室などの無料化を表明し、足立区では当初予算に入っていなかった学用品や標準服などの費用を、最終本会議で急きょ補正予算計上するなどの措置が取られました。

 北区でも、学校給食費に続き、学用品、修学旅行代、標準服代を無償とし、経済状況に左右されない教育環境を実現すべきです。

 18 歳までの均等割5割減額については、特別区長会もその実現を国に提言していますが、当面、北区が財源を負担して実施します。引き続き、国や東京都に支援を求めることを要望します。

 北区の財政は年度末と新年度に合わせて80億円の特定目的基金を積むことができることを見ても極めて堅調であり、物価高騰対策をさらに拡充するために、過去最高に積み上がった財調基金の一部を活用することは、十分に可能だと考えます。

 以上、組み替え動議の積極的な意義を述べさせて頂きました。議場の皆様のご賛同を心からお願いし、日本共産党北区議員団の討論といたします。ご清聴ありがとうござました。 

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