男女共同参画推進フォーラム、「ジェンダー平等は、どこまで達成できたのか」世界から見た日本

 本日8月27日から、9月26日まで、R2年度男女共同参画推進フォーラムが開会となりました。今回は、コロナ感染防止のため、初のオンライン開催に。

 基調講演は、前国連女性差別撤廃委員会委員長、G7ジェンダー平等諮問委員会委員、弁護士である林陽子さんが、「私たちはジェンダー平等をどこまで達成できたのか?~世界から見たニッポン~と題してお話されました。

 林さんは、1995年の北京女性会議で、人権、暴力、健康などに関する項目を女性の目で見直そう、ジェンダー主流化が政策目標となった以降、世界では、経済のグローバル化や緊縮財政、軍事・武力紛争、テロリズムなどにより、移民、難民、女性の貧困や女性への暴力が社会問題化してきたが、

 そうした中、2003年には、アフリカで人権条約の発展、2011年には欧州でイスタンブール条約(女性に対するあらゆる暴力、及びドメスティック・バイオレンス防止条約)の制定。昨今は、アメリカハリウッドから始まった#MeToo運動が拡がり、日本でもフラワーデモ、刑法改正の動きにつながっていると紹介。

 日本の現実をみると、ジェンダーギャップ指数が、G7の中でも大きく落ち込んできた。例えば、2006年には、フランスが70位、日本80位であったが、2020年には、フランス15位。日本121位となっているとして、

 それでは、日本に何が、足りないのか?と課題を提起しました。

 一つ目に、法律に残る差別をなくす必要がある。すでに、女性差別撤廃委員会から、次回の日本審査に先立ち、日本政府への法律に残る差別について「事前質問集」が公表されている。

 ・民法では、夫婦別姓の導入。再婚禁止期間(100日)の撤廃。・刑法では、性暴力犯罪への対応や、堕胎罪の撤廃、安全な中絶へのアクセス保障。・労働法では、同一価値労働同一賃金、セクシュアルハラスメントの禁止。3つのILO条約の批准(111号差別待遇、189条・家事労働者、190号仕事におけるハラスメント撲滅)・税法(家族労働に関する所得税法)・年金法律(高齢女性の最低所得補償)・災害給付金の支給に関する法律(給付金が世帯主に支給)など。

 この点で、フランスでは、2019年、女性に対する差別を残す法律を特定し、廃止する。必要な予算を確保し、期限を決めて進捗をはかることが示された。

 男女の賃金格差をなくしていく課題(日本は100:73、OECDでは下から3番目)でも、G7では、見える化(公表義務)立法化で是正している。

 二つ目に、包括的な差別禁止法を作ることが重要。NO HATE!

 平等先進国の多くは、包括的な差別禁止法が成立しており、人権機関(独立・中立・公正な)とセットで効力を発揮している。

 三つ目に、クオーター制の導入。

 四つ目に、ジェンダー平等機関の強化が必要。

 政治的に高位にあり、市民社会と連携し、十分な予算と政策能力を持ち、政府の全ての政策に影響をおよばす機会がある。フランスやカナダでは、議会の中にも超党派のジェンダー平等委員会、女性の地位向上委員会が設置されている。

 五つ目に、個人通報制度の批准。

 女性差別撤廃条約締結国189か国中、114か国がすでに批准しているが、日本ではまだである。

 以上の、課題を整理され報告されました。そうした課題を前進させ、法律による差別をなくし、包括的な差別禁止法を制定することをすすめていくためにも、身近なくらしの中からの人権意識の醸成、地方議会からのボトムアップ、そして立法にかかわる国会での女性議員の比率を抜本的に上げていく重要性を痛感しました。

 最後に林さんは、Covid-19と女性指導者について、クリスティーン・シンキンとマデラン・リーズによる、以下の考察を紹介されました。

 世界を見渡すと、指導者が戦争や軍事用語を使わず、Covid-19による死者数を比較的少数にとどめた国々がある。ニュージーランド、アイスランド、フィンランド、ドイツ、台湾、ノルウエー、デンマークなどがその例。トップが実践的でセンシティブであり、かつ情熱を持った呼びかけを国民に行った。その多くは女性のリーダーであった。

 これらの国々においては、指導者のリーダーシップが、相対的に分断されておらず、硬直した不平等がなく、個人的、政治的、経済的な利得より、人々の安寧が大事にされている。

 この評価は絶対的なものではないが、ラテン語で「物事はそれ自体が語る」という格言がある。女性リーダーを生み出した社会が、社会のありようそのものを語っているのだ。

 

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