「世帯主」から「個人」へ

 コロナ禍の下、一人一律10万円の特別定額給付を勝ち取ったのを喜んでいたのもつかの間、銀行口座に振り込まれる先は「世帯主」!にドン引きした人は少なくなかったと思う。

 DVや虐待などで、世帯主から容易にお金を受け取ることができない人はもちろんのこと、通常でも、「世帯主」という他者が介在することで、それ以外の人が、自分の意志だけで、一人分のお金を簡単に手にすることはできないことの、なんという不便さ、不自由さだろうか。

 過去にも、2009年リーマンショック時の定額給付金、2011年の東日本大震災でも、世帯主への一括支給で問題が指摘された。今回は、虐待やDVで家を離れた人については、世帯主以外でも給付金を受け取ることが可能になったが、それでも未成年の少女たちの場合は、自治体の窓口対応に格差があり、受け取るのが容易ではなかった。

 加害者の世帯主と同居している被害者に対しては、給付金の受け取りに関して何の救済もはかられていない。

 「世帯主」か否かについては、職場の諸手当についても格差があるという。

 民間の労務行政研究所の調査では「非世帯主、無扶養者、単身者」の住宅手当が、「世帯主・有扶養者」の7割前後。(額で7000円前後)2019年の総務省の調査では、共働き世帯が専業主婦世帯の約2倍になっており、もはや時代に合致しない状況は明らかです。

 そもそも「世帯主」制度は、戦前の封建的な「家制度」の戸主制度を引き継ぐもので、日本弁護士連合会も「世帯単位の住民基本台帳法制は、「家」意識と家族内の序列化の構造を再生産していく有力な装置」と批判しています。

 ジェンダー平等社会をつくる上でも、給付を「世帯主」ではなく、個人にすることと共に、大本にある「世帯主」規定を見直すことが求められます。

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