みんなでつくる、みんなの児童相談所

 27日、滝野川3丁目にある、子どもの居場所「ピノッキオ」が主催で、昨年から開設された江戸川区の児童相談所の様子などご紹介頂きながら「みんなの児相を考える会」が開催され参加しました。

 最初に、会を企画された静岡大学の白井千晶先生から「5月に江戸川児相に見学にいき、大変感銘をうけた。行政に要望するだけでなく、市民として、自分にも何ができるのか。一緒につくる視点で話し合っていきたい」との挨拶があり、そのスタンスがすばらしいなあと感じました。

 貴重報告は、江戸川児童相談所の開設と取り組みについて、上坂かおり課長よりお話。

 江戸川児童相談所の開設までの経過や施設概要(1階に子育てひろば、2階が児童の居室、3階が児童相談所、4階に心理相談の部屋など)を紹介された後、江戸川区に児童相談所ができてからどんな状況か、大きく6点をご紹介頂きました。

 1、近隣・知人からの直接の相談が増加。区内の3つの警察署とも強い連携。2、子どもからの直接の相談も増えた。以前は、3つの区で33件だったものが、江戸川区だけで34件になったと。リュックを背負って、直接来所してくる子ども、再保護を自ら求める子どももいると。(一時保護所も居心地がいいとの評判がある)3、顔の見える関係で、関係機関とも連携しやすい。4、地域からも様々な支援(寄付や就職支援、区内医療機関との連携、愛の手帳の取得、虐待の判定など)が進んだ。5、職員の意見が反映しやすい(オンライン相談の実施、広報ビデオの作成、柔軟な里親支援ほか)6、子ども施策を担っていける喜びと責任など、お話頂き、身近な基礎自治体である区が、児童相談所を運営する良さを感じることができました。

 一方、課題として、住民との距離が近すぎる(江戸川区の職員は6割が区内在住)、運営に独自の経費負担がある。職員の確保・育成などがあると報告を受け、とりわけ財政負担と職員確保・育成は、23区全体でも共有化し取り組むことが必要だと感じました。

 続いて、江戸川区の里親制度の取組について、大沢副参事より報告を受けました。

 社会的養護の必要な児童の大半は、現在、施設での処遇が行われているが、家庭での養育をどう拡げていくか「里親」の取組は、どの自治体も大きな課題です。江戸川区では、担当副参事を置き、事業を推進。家庭での養育を10年後には、現在の5倍に広げていく目標をもち、児相開設にあわせて、里親ステーション「ふぉれすと」を開設し、独自HPの立ち上げ、民間フォスタリング機関とも連携し、普及啓発、里親開拓、里親支援に取り組んでいる内容をお話頂きました。

 私自身の受けとめでも、日本はとりわけ、親になることの責任やプレッシャーが大きい中で、里親制度を拡げていくためには、自分でもできるかもしれないと感じられる学びや支え、制度が必要なのでは?と感じています。江戸川区の取組では、チーム養育というあり方、ファミリーホームの誘致、週末・季節里親事業、里親サロン、里親登録証明書の発行、区の職員から実践するための里親休暇の制定などなど、大変、参考になる内容を伺うことができました。もっと、理解をすすめたいと痛感しました。

 次に、児童相談所や子ども家庭支援センターにおける児童心理司のしごとについて、木野内由美子係長から報告を受けました。

 児童心理司のしごとは、保護者の対応や子どもの行動、親子関係など、個人と家族の心理アセスメントを行っていくが、施設の中で話を聞いたりするだけでなく、児相への通報があった後の初動の訪問に同行して保護者や子ども、その家庭の見立てをすることが重要ではないか。

 また、一時保護所での子どもとの関り、地域の関係機関との連携、保護者のアセスメント力の充実、新人を含めた人材育成のための自治体での取り組み、ジョブローテーションの充実など、「地域にこんな心理士がいるよ。かかりつけ医のような顔の見える関係をつくっていきたい」との、支援の現場での息づかいが感じられる内容でした。

 続いては、江戸川区で長く女性相談、DV相談を受託している、NPO法人女性ネットさやさやの松本さんから報告。

 女性に対する支援、児童に対する支援は関係法規も別だてて、従来、連携がとりずらかった。しかし、実際の家庭の中では、DVや虐待は表裏一体、家庭内に暴力の関係性や支配があり、その認識で、女性と子ども一体の支援を取り組んできた民間の良さを今こそ活かす必要があるとのお話、江戸川区の実践に大変、感銘を受けました。

 地域の中で孤立しているDV・虐待家庭を支援していくためには、地域の中に安心の居場所や人とのつながりがあることがとても重要。そして、当事者こそ専門家、DV被害者から支援者へと、支援を受けていた方が、自分と自信をとりもどし、支援する側になっていく取り組みも、非常に重要だと感じました。

 今後の取組に向けては、虐待通報があってかけつけ、相談になるという待ちの支援ではなく、DVの認識がない母親、子どもへの影響についての情報提供、母親の気持ちに寄り添ったカウンセリング、アウトリーチの活動がますます求められる。地域の中に気軽に話せる居場所、とりわけ18歳以上の若年女性の居場所、社会資源をもっとつくっていかなければならないと。心から共感しました。

 次は東京都から江戸川児相開設に伴い派遣され、係長の任で児童福祉司として働いている白田有香里さんの報告。

 江戸川児童相談所の良さを縦横に語ってくださった内容が、23区での取り組みをエンパワーしてくれるものでした。

 1つに、江戸川の運営体制について、子ども家庭支援センターと児童相談所の2元体制で、常勤弁護士を配置。里親や研修に対応する副参事を置いている。児童福祉司、心理司を東京都の倍配置している。DV被害者支援のNPO相談員の配置。地区担当制をとるなど、体制が充実している。2つに、意思決定が速い。区職員が主体的にどんどんアイデアを出し、制度化もすすめる。地域の受け入れが良い。メディア活用、Utube発信などオープンな雰囲気。視察や見学も受け入れる。3つに、一時保護所の運営を、子どもの声をいかし、環境も整備するよう力をいれている。定員を超えての入所はしない。個室(ベット、TVつき)リビングは共有スペースだが、個室の出入り自由。私物の持ち込み可、高校生は登校も可能、外泊も可能。子ども会議を開き、ルールを子ども同士で話し合ったり、イベントは子ども実行委員会をつくって取り組む。意見箱があちこちにある。子どもの声からはじめようと、子どもアドボケイトを指向している。

 課題としては、児童相談所と一時保護所、児童相談所と子ども家庭支援センターの連携、互いの理解、困難ケース多いが、職員の経験年数は短い、スキルアップや研修の充実、職員のメンタルヘルスなどが語られ、支援現場をささえるマンパワーが一にも、二にも最優先だと実感しました。

 最後に、江戸川区の他、準備をすすめている中野区や大田区からも報告を頂き、大変貴重な学びを得ることができました。北区の取組にも活かしていけるよう頑張りたい。

江戸川区児童相談所のHPより

 

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