くらしから考える自治体行政のデジタル化 自治体学校3日目

自治体学校3日目の全大会は、暮らしから考える自治体行政のデジタル化と題し、龍谷大学教授の本多滝夫さんが講演。以下、要旨。

・行政手続きのオンライン化について、

 住民が行政窓口にくることの手間を省くことができ、他方、自治体は申請や届出をした住民の情報をデジタルデータとして入手し活用していけるようになる。住民の利便性の「向上」と共に、自治体がプラットフォームとしてデータを集積、蓄積する上でも必要な業務「改善」といえる。(北見市では、書かないワンストップ窓口を設置し、職員がデータを入力し申請書を作成)関係各課で窓口業務の人員削減にもつながる可能性がある。

 2021年に制定されたデジタル改革関連法の一つ「地方公共団体情報システム標準化法」が、自治体に情報システムの標準化を求める法的根拠になっている。標準化の対象は、基幹系20業務(児童手当、子ども・子育て支援、住民基本台帳、戸籍の附表、印鑑登録、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、戸籍、就学、健康管理、児童扶養手当、生活保護、障害福祉、介護保険

、国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金)で、これらの業務の情報システムについて、自治体は国が定めた標準化基準に適合するものを採用しなければならない。(国からの補助金足りず、自治体の持ち出し必要。独自システムはなおお金かかる)

・情報システムの標準化と自治体窓口のDXについて

 行政手続きのオンラインデータ(集積された個人情報)を民間と連携し、民間事業者が創出する新しいサービス利用に必要なデータをデータ連携基盤(公共サービスメッシュ)により、公共分野から引き出せるように。

 会津若松市スマートシティのデータ連携基盤は、20種類のデータ・アセット(基本属性情報、オープンデータ、購買履歴データ、災害時安否情報、観光場所情報、地域農作物受給情報、ヘルスケアIot機器情報)と、22のサービス(行政手続き申請、地域通貨決済、デジタル防災、視察者向け観光アプリ、地産地消マッチング、オンライン診察、健康管理)と、さらに3つの外部連携システム(行政保有パーソナルデータ、電子カルテ情報連携、会津大学)とを連携するシステム構成になっている。

・情報連携において、役割を果たすのが「マイナンバーカード」

 マイナンバー制度は、1、個人にナンバーをつけ、パーソナルデータや受益者負担を明らかにする。2、住民が届け出する際、住民票不要。ワンストップでできる利便性。3、恣意的なプライバシー侵害をふせぐため。(カードをつくるつくらないにかかわらずすでに付与されている)

・マイナンバーカードをつくる意味は、

1、身分証明書になる。2、ICチップによる当人認証機能(マイナポータルへのアクセス、住民票のコンビ二交付でログインする時の当人証明)

・マイナポータルの2つの機能

1、自己情報コントロール機能(やりとり履歴、所得や個人住民税等わたしの情報を確認できる)

2、オンライン化した行政手続きのハブ機能(国だけでなく、自治体の手続きについての検索やオンライン申請ができる)

 マイナンバーカードとマイナポータルは密接に関連し、更には、国、自治体、民間事業者(本人の同意にもとづき)自己情報を提供できる。マイナポータルは、行政手続きのハブだけでなく、住民が民間サービスを利用する際の本人の個人情報を提供するプラットフォームになっている。

 こうしたマイナンバーカードの横展開で、各種の資格証明書のマイナンバーカードとの一体化が強行されている。その一つが、健康保険証のマイナンバーカードへの一体化(従前の紙の保険証は廃止)、運転免許証との一体化、在留カードとの一体化が予定され、一体化は事実上のマイナンバーカードの義務づけと言える。

・デジタル社会と自治体、住民との関係について

 自治体が自治体でなくなってしまうのでは。システムの標準化により独自性は失われ、コストを理由にその役割を放棄し、データ連携で民間にゆだねることになりかねない。マイナンバーカードを持っていなければ住民サービスから排除されかねない。

 住民は「市民カード」化したマイナンバーカードを身分証明書として常時携帯することを求められ、マイナンバーカードによる認証により自治体や民間サービスを受けることが許され、その利用により、行動はデータとして常時、収集・記録され、そうしたデータの評価にもとづき、平時においては行動変容を促され、有事においては指示される位置におかれるのでは。

 憲法は、自己決定のあり方が根底にある。私のことは、私が決める。自分のことは自分で。自己情報は個人のもの。デジタル社会は、個人の尊重を根底からくずしていくものにならないよう慎重な検討が必要である。

 講演を聴き、デジタル化が住民にとって利便性を高めるとの利点の裏に、監視社会、監視国家への大きな政治的意図につながっていること。地方主権、自治体の変質となる可能性があること。行政が得たパーソナルデータをビッグデータとして民間が活用し、利益の対象とすることができるなど様々な視点が考えなくてはならないことを感じました。

 大問題となっている、マイナ保険証により、従前の紙の保険証を廃止することも、国民皆保険制度を根底から脅かすものとして大きくとらえる必要があると感じた。

 

会津若松市では、

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