どうするネット社会の性教育~SNSの功罪を考える

 7月28日、第46回日本産婦人科医会 性教育指導セミナー全国大会の研修を聴講しました。 

・思春期世代のSNS・ネット利用とトラブルの実態~ネット社会の現状と対策を考える~と題し、ITジャーナリスト、成城大学客員教授高橋曉子氏が講演。

 冒頭、子どもにとってSNSは、コミュニケーションに必須であり、子どものリテラシーを育てることが重要と指摘。若者のネット利用における特徴として、以下の特徴が紹介されました。

  • 子どもはすでに、GIGAスクールで1人1台端末が貸与され、ネットに接続できる環境にある。
  • SNSのやりとりが当たり前、ゲームでのコミュニケーションも一般的、みんなが使っている
  • 知りたいことはSNSで検索 
  • スマホで小遣い稼ぎが普通(闇バイト、詐欺被害にもあいかねない)
  • ネットでやりとりすると信用する傾向(性被害。児童ポルノ事犯も)
  • タイムパフォーマンス、コストパフォーマンス重視
  • 個人情報を出すことに抵抗がなく、管理も甘い、
  • 制限解除方法、抜け道はネットで調べられるなど。

 低年齢に人気は、LINE、Tiktok、YouTubeなど見るものが中心だが、中学・高校生になるとLineが増加、X、Instagramなど発信へ。複数のアカウントを使い分けることも。オープンチャットのLINEで知り合い、ネット友人になったり、ゲームで話しながらプレイし親しくなる。そうした中で、子どもが大人とつながり、SNSネイティブだからこそ、やりとりする相手を信用し、会いに行ったり、性被害や自画撮り被害に会う場面もでてくる。

 SNSの問題として、匿名での誹謗中傷による自殺、ネットいじめも増加傾向、ネット依存症となり長時間利用する若者も多い。アメリカでは「SNSは未成年に悪」とされ、禁止法案が出されるなど規制がすすんでいる。日本では、2022年4月から成年年齢が18歳となり、SNSなどの18、19歳の消費者トラブルも増えている(金、美は要注意)。加害者は年齢、性別、職業を偽っていることが多く全体の10%がグルーミング被害の経験あり。ネットでの性被害や自画撮り被害増加に対抗し、刑法改正時、16歳未満にグルーミング罪(面会要求罪)が成立した。

 対策として専用フィルタリングの利用、ペアレンタルコントリール機能の活用、家庭でのルール(行動指針)づくり(利用時間、ネットで知り合った人と会わない、個人情報の注意、他人の悪口、不快に思うことは書かないなど)相談できる関係性をきずき、悩んだら家族や学校、相談機関も伝えることも大切と強調しました。

パネルディスカッションでは、京都少年鑑別所の医務課長である定本ゆきこ氏が報告。思春期は自分崩し、自分探しの時期。対人刺激に敏感、揺れも不安も大きい中、依存と反発を繰り返し、自分の価値観を見出し、新しい自分をつくっていく、自己同一性を獲得する支援が重要。

鑑別所で出会う若年少年は、スマホやタブレットから、過剰な性的刺激を受け続け、性的認知の歪み、性行動を異常なもの加害的なものになっている。若年女子は自分を無条件で受け入れてくれる二者関係を強く求め、性的搾取を受ける結果になっていることがほとんど。SNSの登場と普及が男子生徒の性加害行動を増長させ、女子が性被害を受けやすい状況を助長していると指摘。情報の制限と規制が必要であると共に、早い時期から適切な性教育を受けることの必要性はますます高いと強調しました。

●セクシュアルヘルス&ライツとSNSと題し海と空クリニック京都駅前院長の池田祐美枝氏が報告。

デジタル性暴力について世界中で問題になっており法的な規制が始まっている状況が報告されました。

 2021年、オーストラリアでは、オンライン安全法が可決。子どもに有害なコンテンツを特定、軽減、管理する義務をオンラインプラットフォームに課すことに。EUでは2022年に、デジタルサービスアクト法が可決し、デジタルコンテンツの透明性、暴力性を外部機関が監査して、削除要求ができることに。2023年、イギリスではオンライン安全法が可決し、メディアプラットフォームが犯罪をチェックして、行政や警察に報告する。2024年、アメリカではKidsOnline Safety Act法が、今まさに審議されている。

 日本においては、青少年インターネット環境整備法により、事業者は年齢確認をしてフィルタリングの設定をしなければならない。デジタルプラットフォーム取引透明化法により、巨大IT企業の公平性証明する書類を行政に提出することなったが、まだまだ不十分。法的にも子ども・若者を守る整備が必要と指摘しました。学んだことを北区の取組みにもいかしていきたい。

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