コロナ禍での医療、保健、介護 社会保障体制を再構築するために

全国議員研修会2日目は、分科会「コロナ禍での医療、保健、介護」の社会保障体制について、鹿児島大学教授の伊藤周平さんの講義を受講しました。

伊藤氏は、コロナ禍で繰り返された医療崩壊と生存の危機の背景には、医療病床や保健所数の激減があると指摘。

1999年~2019年までの間、歴代政権の下で行われてきた病床削減(約25万以上)、なかでも感染症病床が削減され、2019年段階で感染症第1種、第2種指定医療機関は1871床しかなく、1996年の9716床からみても激減していること。

また、2014年の医療介護総合確保法により、病床機能による地域医療構想の仕組みが導入したが、そのねらいは入院患者を病院から在宅へ、さらに介護保険制度へと誘導することで、2025年までに全国で約15万床減らし、医療費を削減することにあると告発。

そのターゲットになっているが、公立・公的病院であり、東京都も都立・公社病院の独立行政法人化を決定した動きを紹介しました。

さらに、公衆衛生の要である保健所についても、1994年に保健所法を全面改訂し、地域保健法を制定。従来の人口10万人に1か所の保健所設置を、2次医療圏(平均人口約36万人)に1か所とし、保健所の数を激減させた。

こうした状況の下で、PCR検査体制の不備、クラスター対策の破綻、臨時の医療病床確保を手当てせず、一般病床の転換でしのぎ、医療全体を疲弊させ、自宅療養という名の自宅放置など、新型コロナウイルス感染症に、いまだ対応しきれていない。

それどころか、2021年末からは医療機関の実施するPCR検査や抗原検査の診療報酬を大幅に引き下げる、2022年10月からは、75歳以上の高齢者に窓口2割負担を導入するなど、コロナ禍を経てもなお、医療費抑制政策を変更していないと強調しました。

以上の点から、医療・保健政策の課題として、

1、コロナ危機に対応して、

①感染症病床や宿泊療養施設を増やし、自宅療養者への往診体制を強化すること。

②検査体制の早急な整備。全額国庫負担で定期的PCR検査の実施。医療機関のPCR検査料の診療報酬の引き上げ。

③コロナ対応をしていない医療機関に対しても、外来患者などの減少に伴う損失補填。

④地域医師会と連携強化し、発熱外来による検査・診療の拡大。

2、医療提供体制の課題

①公共財としての医療、公的責任にもとづく医療提供体制の再構築

②公立・公的病院の再編統合リストは撤回し、公立・公的病院の増設をはかる。

③医師・看護師の計画的増員・養成。

3、保健政策の課題

①保健所の増設と機能拡充、保健師の増員をはかり、公衆衛生体制の確立。

②地方衛生研究所を法律に位置づけ、国立感染症研究所とともに、人員、研究・調査費の拡充。

など、提言されました。

これまで行われた、医療・保健の抑制政策を転換し、公共財としての保障、拡充の視点で地方自治体でも取り組みをすすめたいと感じました。

講演する伊藤周平鹿児島大学教授(左)

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