コロナ禍のDV被害者支援を考える

10月8日~9日、徳島市で開催されたオータムセミナーに参加しました。

議会における女性議員ゼロの自治体をなくす取り組みなどをすすめているフェミニスト議員連盟主催。

今年のテーマは、ジェンダー平等の社会を!

私は、コロナ禍のDV支援について、徳島市内で被害者支援に取り組んでいる、一般社団法人「白鳥の森」代表理事の野口登志子さんからお話を伺いました。以下、講演の要旨を報告します。

(1)DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者・内縁関係・交際相手など親密な関係の間で起こる暴力。

かつては、親子喧嘩、夫婦喧嘩として、民事不介入、家庭内のことは、、、と見過ごされてきたが、2000年児童虐待防止法(子どもに対する暴力)、2001年DV防止法(配偶者や交際相手等に対する暴力)、2006年高齢者虐待防止法(高齢者に対する暴力)と、2000年に入り、家族間でも「暴力」は犯罪であるとして、法律に明記されました。

その犯罪行為は、暴行、傷害、殺人未遂、殺人、器物損壊、逮捕監禁、過失傷害、強要、脅迫、名誉棄損、強制性交等罪などです。

これらの犯罪行為は、「家の中」だからという理由で許されると考えているならば、自分にも「暴力容認」の意識があるということに気づかなければいけないーとの指摘は、法律ができたとしても、未だ、一人一人の暴力に対する認識には差がある現状からも、大変、重要だと感じました。

(2)DVの種類には、殴る、蹴るなどの身体的暴力の他に、怒鳴る、無視する、バカにするなどの精神的暴力、生活費を渡さないなどの経済的暴力、友人とのつきあいを制限する社会的暴力、同意のない性行為を強要する、避妊に協力しない等の性的暴力がすべてはいります。

そうした暴力手段を用いて、パートナーを支配・コントロールする関係性であり、それは深刻な人権侵害であるということ。

本来は対等・平等であるはずのパートナーとの関係が、支配・被支配の関係に陥っていると(当事者自身が)感じるのであれば、その二人はDV関係にあると言えるとの指摘も大事な点だと感じました。

ここで、加害者が「軽く蹴っただけ」「ちょっと叩いただけ」と主張する暴力で負った怪我の写真が映し出され時、会場は息をのみ、悲鳴があがりました。

そこには、内出血で青紫に大きく腫れあがった足や、顔面の目や鼻がありました。まさに暴行を受けた惨状です。

(3)DV被害者は、なぜ加害者の下から逃げ出さないのか?

そこには、報復に対する恐怖心。生活に対する不安、金銭的な理由。変わってくれるのではないか?との期待。自分さえ我慢すれば済むとの思い。離婚に対する抵抗感。親や身内に迷惑をかけたくないとの配慮。子どもにとって両親がそろっていた方がいいのではという思い。「別れるなら死んでやる」という脅し(これは、殺すと同じ脅迫)などがあるためとのこと。

私自身も相談者の方から、「離れても、いつ、どこで会うかもしれないと、心のどこかで安心できない自分がいる」「パートナーの訃報をしった時、心底、ホッとした」との心情をお聞きした時、自らの命、人権が脅かされた恐怖やトラウマの大きさを思い知りました。

(4)DVの子どもへの影響

こうした家庭内での暴力が、たとえ子ども自身に直接的な暴力がなかったとしても、心理的な虐待にあたると定義され、「面前DV」として、子どもの大きな傷つきとなっています。子どもにとって、両親がいた方がいいのか?と言う点では、暴力のないところで育つ方がずっと良いとも話されました。

子どもが家庭内でのDVを録音していた音声を聴いた場面では、父親や母親が大声で怒鳴りちらし、エスカレートしていく音声が会場に響き渡り、自分自身も身体がすくみ、大きな恐怖で苦しくなりました。

(5)二次被害の防止

被害者から相談を受けた人の何気ない一言で、さらに被害者が傷つけられることを「2次被害」という。被害者に接するにあたっては、

・暴力は「加害者の問題」という認識で。どのような理由(らしきもの)があったとしても、暴力が正当化されることはなく、決して許されない。

・被害者の気持ちに寄り添い、一緒に考える。多くは混乱し、判断力も奪われてい場合がある。まずは、受容と共感から。

・解決策や助言を押しつけず、被害者の状況を考える。こどもがいる。精神疾患、生活困窮、高齢、障害、外国籍、LGBTQsなど

NGワードは、「あなたにも問題があるのでは?」「夫婦で話し合うべき」「嫌なら逃げればいいんじゃない」「~さんの方がもっと大変な思いをしている」「離婚すると子どもが可哀そう。あなたが我慢すればいいのでは」

自分も相談を受ける場合が少なくなく、学んだ内容を肝に銘じたいと強く思いました。

(6)コロナ禍で激増したDV

内閣府の調査でも、DVの相談件数は過去最高、全国で約7万件も増加した。DVを生む根源に、ジェンダーバイアス、根深い性別役割分業がある。DV加害者は、ジェンダーバイアスに強く縛られている。

・男は稼いでなんぼ(男性に過度なプレッシャー)、父親は家長だから、家族を守らなくては(みんなで支え合うのが家族)、母親は家事をするのが役目(家事の得意な男性もいる)、父親は休みの時くらい家事や育児を手伝うべき(手伝うのではなく、一緒に協力し合う)、子育ては母親の仕事(父親も同等の責任負っており、2人で育てる)

(7)DV根絶に必要な3本柱

①被害者支援、②加害者対策(更生も含む)、③子ども達を加害者にも被害者にもさせない教育(大人が変わるのは本当に大変)

お話を伺ったあと、「白鳥の森」で行っている支援メニューのひとつ、シェルターとしての受け入れている室内も見せて頂けることができました。野口さんは「行った先がどんな場所なのか、安心して頂くためにも、室内は見て頂いているんですよ」と。そのやすらぎを感じられる環境づくりにとても感激しました。

眉山より、徳島市をのぞむ。淡路島も見える。
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