GIGAスクール構想の課題と今後の教育

手島純 星槎大学教授の講演を受講しました。

以下、学び考えたことをご報告します。

手島さんは、自己紹介の中で、高校の社会科教員にたずさわり、通信教育にもかかわってきたとのこと。

GIGAスクール構想、シンプルに言えば「1人1台端末」それが意味するものは?と問いかけ、時代が変わっていくことを前提としながら、ICTのスキルや理想だけでなく、現実もみて、いろいろな視点をもって全体像を位置づける(現場にかかわる教職員自身にとっても)が大事ではないかと指摘しました。

本日の講演の視点として、1、教育の現状と未来 2、感染症と社会のあり方、3、通信教育の歴史の点から論じられました。

1、教育の現状と未来の視点からは、

子ども達の現状は、格差社会の拡がりの中で、学力も体力についても、子どもの二極化傾向(ふたコブのらくだといわれている)が見られる。

2021年の中央教育審議会答申や、経済産業省などの提言では、子ども達の多様化がすすむ中で、個別最適化の学び、情報活用能力を育てる。画一的、一斉講義的型の学び方を改善し、教師の長時間勤務を解消、学校の働き方改革を果たしうるものとしているが、実態はどうか?現場で何がおきているかをきちんと見ていく必要があると問題提起。

2、感染症と社会のあり方の視点からは、

世界の歴史をみると、天然痘、ペスト、マラリア、インフルエンザなど、感染症によるパンデミック後の社会のあり方は、大きく変化している。

コロナ感染症により、社会のデジタル化、国際秩序の流動化、教育のあり方も変化するのは必然であるが、問題は、どう変化するのか?ではないかと。

3、通信教育の視点からは、

通信教育は、勤労青少年はもちろん廣く一般成人に対して、その教育の要求を満たし、進学の機会をあたえる教育の機会均等が基本であるとし、その目的は、教育を民主化して広く人々の手に開放することであり、「いつでも、どこでも、だれでも」受けられるべきものだと強調され、GIGAスクールにおいても重要な点ではないかと指摘。

2019年当初のGIGAスクール構想では、多様な子ども達を誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させるとしていたが、

最近は、公正や誰一人とりのこすことのないがぬけてきてはいないか?

ICT環境の整備が全国、十分に整っているのか?家庭環境によっても違いがあるのではないか?経済格差が教育格差を生んでいるのが実態ではないか。

学校現場でも、ICT担当教員が仕事量が増え、一番つらい状況があると言われている。

教育新聞(2022年4月15日)によると、GIGAスクール構想により、授業、公務の負担が「増えた」「どちらかと言えば増えた」と回答した小中学校の教員・管理職は、60.5%に上った。多忙感についても、「感じる」42.7%、「どちらかといえば感じる」53.8%と、計96%にもなった。

公立の義務教育諸学校等の教職員給与等に関する特別措置法(給特法)では、労働時間オーバーを見込み、4%給与を公務員ベースからアップしているが、現在、小学校で18時間超、中学校で24時間超、残業時間として約9000億円必要、調整額を40~50%引き上げる額だと言われている。

給特法の改定が無理なら、労働基準法に即して、労働条件の改善、仕事を多くさせない改善をしていく必要がある。今、学生は教員免許はとるが、教員にはならない人が増え、教職員の倍率も小学校は3倍を切っている。質の確保としても課題となっている。

以上の点から、今後の教育のあり方としては、デジタル化が進むのは必然であるが、負の側面にも目を向ける対処することが必要である。また、教育産業のさらなる公教育への介入により、アメリカでは、差別教育などの実態が生まれ公教育が崩壊している現実も一部にある状況。日本は学ぶ必要ある。

一人一人の個人の幸福を高める教育を模索する観点から、当事者である児童・生徒、教職員の現状を視野にいれた「改革」が求められていると結びました。

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