2020.01.28
女性自立支援法(仮称)制定にむけて
東京都社会福祉協議会婦人保護部会が主催した「女性自立支援法(仮称)制定に向けて、~生まれ変わる「婦人保護事業」、今こそ!~と題した研修会に参加しました。
昨年度、厚生労働省主催による「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」が開催され、学識経験者、婦人保護事業に関わる行政機関の代表の方々や、民間ベースで、長年、女性支援に取り組んでこられた団体、昨今、注目されている若年女性への支援団体、社会的養護が必要な若者への支援団体などの皆さんが一同に会し、上記テーマについて、大変、熱心な議論を行い、2019年10月に「中間のまとめ」を発表しました。
研修会では、検討会の座長であった城西国際大学福祉総合学部教授の堀千鶴子氏より、検討会の意義と成果、今後の課題について以下、報告されました。
1、現行の婦人保護事業は、困難を抱えた女性を処罰の対象とする売春防止法を根拠法としており、女性の権利擁護、人権尊重、自立支援がもりこまれておらず、社会保障分野の潮流から取り残されている。また、近年、性暴力・性被害にあった10代の女性への支援や、AV出演強要、JKビジネス問題への対応が必要である。
2、検討会は、厚労省が初めて、政策課題としてとりあげ、官民合同の会議で、困難を抱える女性と包括的にとらえ、売春防止法第4章(保護更生、婦人相談所・婦人相談員・婦人保護施設などが位置付けられている章)を廃止し、人権擁護、男女平等の視点から、包括的な支援制度、新たな枠組みが必要であると示した。
3、新たな制度の下で、提供される支援のあり方は、●若年女性への対応、性被害からの回復など、多様化する困難な問題を抱える女性を対象として、専門的支援の包括的な提供。●行政と民間が連携・協働した切れ目のない支援。●3機関(婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設)の利用者の実情に応じた柔軟な見直し。●入所だけでなく、通所やアウトリーチ、伴走型支援、同伴児童への対応が必要である。
4、支援の将来イメージとして、権利擁護を柱に、一律支援ではなく、利用者のニーズに即した選択を保障するメニューの提示。新規政策では、緊急対応以外の一時滞在所、短期型入所施設、ステップハウス、アフター支援などが必要。あわせて、婦人保護事業の専門性の向上、機能強化をはかり、民間の主体性を尊重した対等な連携をすすめるなど。
堀教授の報告の後、婦人保護事業の3本柱、女性相談所(婦人相談所)、婦人保護施設、婦人相談員として働いている現場の方々より、新法制定にむけて拡充してほしい事業の内容について、「女性包括支援センターを設置し、包括的な相談機能を見える化させたい」「多様なニーズに対応できる入所施設職員の研修、資質の向上、確保をすすめたい」「婦人相談員は非常勤のところがまだまだ多い。正規化をはかり専門職としての待遇改善と人員の拡充を」などの報告がありました。
研修会に参加し、立ち遅れている女性支援の法整備、制度化をすすめていくために、人知れず、苦労を積み重ねてきた支援の現場の状況、実情を明らかにし、社会的な世論の喚起も含めて、身近な自治体レベルから声をあげていく必要や、売春防止法そのものの課題である買春することを禁止する必要性、刑法の改正も含め、暴力加害をなくしていくことと並行して相乗的に取り組んでいくことが大事なのではないかと感じました。